全石連 森洋会長 2026年 年頭所感

森洋全石連会長
令和8(2026)年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
都道府県石油組合の組合員の皆様におかれましては、国民生活や経済活動に欠かせない石油製品の安定供給に、従業員の皆様とともに日夜ご尽力いただいていることに敬意を表します。
まず冒頭申し上げさせていただきたいのは、公正取引委員会が11月26日、長野石商北信支部に対して排除措置命令を発令するとともに、同支部に属する一部支部員に対する課徴金納付命令を発出いたしました。国民生活や経済活動に不可欠なガソリンの価格について、弊会の会員である石油組合の支部
において、このような違法行為が行われていたことは誠に遺憾なことであり、こうした事態に至ったことについて、石油販売業界として大変重く受け止めております。長野県石油組合では、今回の措置を厳粛に受け止め、二度とこうした違法行為が発生しないよう組織を挙げてコンプライアンス意識の徹底を図り、再発防止に取り組んでいく方針を示しております。全石連といたしましても、消費者をはじめとする関係の皆様の石油販売業界への懸念や不信感を払しょくすることが喫緊の課題であると考え、コンプライアンス委員会を設置いたしました。47都道府県石油組合の皆様とともに、独占禁止法を含めた法令の遵守に向けた石油販売業界全体のコンプライアンス意識の醸成や再発防止に取り組んで参ります。
2025年の石油業界は、2024年10月の衆議院選挙での与党過半数割れに続く、7月の参議院選挙での与党過半数割れによる政治情勢の不安定化に加え、米トランプ政権の「米国第一主義」による関税引き上げによる世界経済の不透明感が増大する中、国内では、国民の間で広がる物価高への危機感から、ガソリン税並びに軽油引取税に係る旧暫定税率の廃止への社会的な関心が急速に高まりました。全石連ではこれまで、ガソリン在庫の回転率が低い過疎地や離島のSSでは、補助の積み増しに在庫の回転が追い付かず、大きな被りが生じ、収益悪化に直面する中小・小規模事業者が少なくないことから、4週間程度の間隔を開け、補助金の積み増しを強く要望してきました。しかしながら、補助金の積み増し期間については、2週間、2週間、3週間に短縮され、昨年12月31日をもってガソリンの旧暫定税率が廃止されました。結果、私どもが危惧していた通り、各地で値下げ競争が勃発し、周辺の高値在庫を抱えた1SSディーラーの方々を中心とした中小・小規模事業者の組合員の皆様が過当競争に巻き込まれることとなり、急速な経営の悪化により廃業・倒産の危機に直面しております。
一方で、資源エネルギー庁が昨年4月に取りまとめた2025年度から2029年度までの石油製品需要見通しによりますと、少子高齢化や人口減といった社会構造の変化に加え、電動車の普及などによって需要減が顕在化する中、ガソリンについては、年率2.4%の減少率で、5年間で11.4%減の3859万KLに減少すると予測しています。このようにガソリンの内需が引き続き減少していくことが見込まれております。こうした中で、一部の過当競争地域においては、ガソリン等の需要拡大を狙った廉売が全国各地で散見されるなど、1SSディーラーが7割を占める石油販売業者の多くが急速なマージン低下に見舞われており、危機的な経営に陥っています。このままでは、従業員の流出を防ぎ、新たな人材を確保していくための持続的な賃上げの取り組みもままなりません。ガソリン等の卸価格の上昇に加え、物価・人件費の高騰といったコストアップについては、適切に小売価格に転嫁するなど、値上げの原資は市場に求めざるを得ません。いまこそ、小売業の原点に立ち返り、粗利益率20%以上を目指すなど、再投資可能な適正利潤の確保による採算経営に転換していかなければなりません。
政府は2050年カーボンニュートラルを目指し、2035年電動車100%方針を打ち出す一方、エネルギー密度が高く、可搬性、貯蔵性に優れた液体燃料の重要性に鑑み、自動車のマルチパスウェイの取り組みに合わせながら、液体燃料のカーボンニュートラル化を目指し、当面、バイオエタノールの導入拡大などを通じて、2030年度からE10、2040年度からE20の低炭素ガソリンの供給開始を計画しております。
また、2024年元日の能登半島地震、同年7月に島根県で発生した大雨災害、2025年2月の岩手県大船渡市での山林火災、そして、昨年11月の大分県佐賀関での住宅火災においても、緊急車両等への円滑な燃料供給に多くの組合員SSの皆様にご尽力いただきました。近年、災害が頻発化・激甚化する我が国おいて、エネルギー供給の“最後の砦”となる石油製品並びにその安定供給を担う、地域インフラとしてのSSの重要性がますます高まっていくことが見込まれます。今後もSSがその安定供給機能を発揮していくための「新しい枠組み」の策定やSSの経営力強化に向けた政策支援なども活用しながら、SSの社会的使命を果たしていきたいと考えておりますので、組合員の皆様のなお一層のご支援・ご協力をお願いいたします。
2026年 元旦
全国石油商業組合連合会
全国石油業共済協同組合連合会
会 長 森 洋