会長年頭所感

森洋全石連会長

 

謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 全石連会長に就任して6年目、一貫してSS業者の7割を占める小規模事業者の視点で組織活動を推進して参りました。皆様からもご賛同いただき、目標に向かって着実に進んでおりますこと、改めて御礼申し上げます。
 昨年は新型コロナウイルスが第5波まで達したものの、元売各社は再編が最終局面の中、需給適正化に邁進され、精販は信頼関係をかつてないほど深化させたのではないでしょうか。この関係を継続し新たな精販のあり方を構築することを期待しております。

 2050年カーボンニュートラル宣言、35年電動車化方針を受けて、我が国の潮流は脱炭素、脱化石燃料へと偏った流れに向かっているようにみえます。確かに環境・社会・企業統治というESG経営や、持続可能な開発目標であるSDGsなどへの対応は、今後、避けては通れない課題であり、私どもも決して否定するものではありません。ただ、昨年後半以降の原油市場の乱高下が国内石油製品市場に及ぼした影響をみれば、石油製品の安定供給がいかに大切か、国民生活の基盤を担うものであるかを再認識されたのではないでしょうか。
 カーボンニュートラルは、SSが地域社会を守る存在であることを考慮し十分な議論がなされることが必要です。私どもはSS業界の危機的状況を踏まえ「SSの主力商品であるガソリン等の需要減が加速し、収益悪化などの死活的影響が直撃する」ことを前提に、35年乗用車新車100%電動化の政府方針については、災害対応やLCAの視点、また雇用問題等の観点から異議を唱えるとともに①エネルギー政策は「S(安全)+3E(経済・エネルギー・環境)」を基本として、我が国の国情(災害・電力事情等)に則して取り組むべき②「社会インフラ」SSへの支援強化に加えてネットワーク維持策の検討③電動車の中ではハイブリッド車を進めるべき④政府方針に合成燃料を選択肢に追加すべき⑤カーボンプライシング(炭素税)には断固反対―などを訴え、その結果は第6次エネルギー基本計画にも反映されております。合成燃料については、ドイツでも選択肢に追加される方向です。
 組合員各位、元売、関係業界のご尽力を得て1万5千ヵ所が自家発電機を備えた住民拠点SSとなり、国内全SSの半数以上が災害時の〝最後の砦〟の機能を有しています。これは国際的にも誇れるものであり、SS業界の石油製品安定供給の取り組みや、災害対応能力の強化に向けた努力や投資を脱炭素の名のもとに軽視することには我が国のエネルギー安全保障の観点から断固反対していきます。
 一方で私どもも販売量で存廃を決するこれまでのSSのビジネスモデルからは決別する必要があります。収益率を高め適正利潤を確保し、持続可能なSS運営の実現に向けて、再投資可能な経営を念頭に果敢に未来を切り拓くという意識変革がいまなによりも求められています。石油流通問題議員連盟のご支援をいただきつつ、確固たる意志で公正な競争環境の整備に取り組んでいく所存です。
 昨年は7月の熱海での土石流災害、8月には豪雨、長雨が全国各地に多大な被害を与えました。6年目を迎える『満タン&灯油プラス1缶運動』を積極的に展開し、災害に備えた自衛的備蓄の重要性を訴えていくとともに、災害時に機能するための訓練に励んでいただきたいと思います。
 消防法規制緩和につきましては、SSのフィールドおよび店内での商品・サービスの提供自由化やキャノピー制限の見直しなど、新たなビジネスチャンスを生む方向に向かっているのは確かです。より地域拠点としてのSSの存在が高まることを願っています。平時の官公需の拡大、そして災害協定との有機的リンクは地域のSS、組合の社会的地位、重要性を高めるものであり、昨年始まったガソリンのギフト券事業も石油製品、SSの大切さを消費者に一層理解してもらう役割を果たしています。
 公正取引委員会は昨年3月にSSのコスト構造に関する実態調査を行い、全国の石油販売業者を対象にアンケートを実施しました。11月にはその結果が明らかになり、今後不当廉売事案についてより厳格な審査や影響要件の重視に加えて注意の実効性の向上などに取り組んでいただくことを期待します。
 本年も様々な課題を一つひとつ乗り越えるためにも、採算性をさらに高め、結束して困難を乗り越えるため皆様とともに邁進して参りますので、引き続き、ご理解、ご協力をお願いいたします。

2022年 元旦
全国石油商業組合連合会
全国石油業共済協同組合連合会
会 長  森  洋