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2014年3月


大震災から3年~被災地のいま、エネルギー政策、災害協定
 
 

  東日本大震災の発生から丸3年。石油とSSを取り巻く視点から、①被災地のいま、②エネルギー政策、③自治体と石油組合との災害協定――を連載する。①では、津波で甚大な被害を受けた東北の沿岸部では地盤沈下した土地のかさ上げや市街地整備工事、高台移転に向けた造成工事が各地で進められている。被災SSも内陸部や高台に移転し、燃料供給で復興を支えている。しかし原発事故の影響で立ち入り規制が続いている地域では除染の遅れから住民帰還の目途が立っていない地域もあるなど厳しい状況にある。また、今春から本格的な復興工事に入るところが増えてくるが、SSではスタッフ不足が大きな課題となっている。

【①被災地のいま】復旧本格化も岩手42SS、宮城52SS廃止

 岩手、宮城の沿岸部の被災地では更地となったままの地域が多かった1年前に比べると、造成工事や建設中の建物が目立つようになり、復旧から復興に向けて着実に動き出している。3・11以降、仮営業していた被災SSは、1年半前から内陸や高台への移転が相次ぎ、自家発電機、受水槽や太陽光発電などを備えた災害対応のSSとして開所している。
 宮城県南三陸町の丸伊伊藤屋(伊藤和長社長・JX系)は昨年3月、仮営業していた沿岸部から約2キロ内陸部に移転したが「移転してから震災前と同じような形で仕事ができるようになった」と伊藤社長はこの1年を振り返る。津波被害の象徴的な建物となった町防災対策庁舎を臨む沿岸部のSSでは給油、配達だけしかできなかったが、移転後はオイル交換、タイヤ交換、洗車などすべてのSS業務を再開した。住民もほとんどが町内の仮設住宅にいるので来客数も回復してきているという。復興関連や三陸道工事なども本格化している。宮城県内では大震災で被災した106SSのうち45ヵ所が復旧したが、52ヵ所が閉鎖に追い込まれた。
 高台への移転で来店者が増えたSSもある。大津波で市街地が壊滅し、SSも全壊した岩手県陸前高田市ではカネマン(菅原悟社長・昭和シェル系)が昨年6月に市内の商系SSとしては初めて高台にフルサービスのSSを新設、移転した。移転前のSSは国道45号線から離れた場所で仮設の「がんばろう陸前高田SS」運営していた。新SSは45号線沿いに開所したことから、常連客に加えて新規の来店者も増えている。特に復興関連業者からは4月に本格的なかさ上げ工事が始まるため「取引申込みは1日に2、3件はある。会社内容がわからない業者も多いため調査をかけてから取引している」(菅原社長)と話す。
 工事現場へは4台のローリーが1日中、軽油配達に回っている。今後の本格的なかさ上げ工事に対応するためローリー、スタッフを増やしたい意向だが「人手不足が続いており求人を出しても問い合わせもない」状況が続いているのがネックとなっている。求人難は被災地では共通の課題で「募集はしているが集まらない。需要はあるがローリー配送の人手がないので苦戦している」(釜石市のSS)などの声が多い。岩手県の沿岸被災地の全壊SSは68ヵ所。このうち営業・復旧は86ヵ所となっているが、廃業・廃止は42ヵ所、休止中が2ヵ所。
 原発事故による除染や立ち入り規制地域では昨年7月に原発から20キロ圏内の浪江町で2SS(叶屋・コスモ系)を再開したところもあったが、1年前と大きな進展はみられない。原発から20キロ圏内には29ヵ所のSSがあったが営業再開したのは8ヵ所だけで21ヵ所が休止。20~30キロ圏内には21SSあるが営業再開は17ヵ所、休止は4ヵ所となっている。
 20キロ圏内に組合員SSがある福島石商・南相馬支部の高橋順支部長(高橋治郎商店社長・出光系)によると「組合員共通の課題は募集をしても人が集まらないこと。除染業者が増えて需要は相当上がっているが、現在の事業所の人員で捌き切れるかという問題が一番大きい。震災以降、人手不足が慢性化している」と話す。2月から南相馬市小高区で始まった除染作業で使用する軽油の供給については、同支部で受けて配送を開始した。

 
国道45号線沿いの高台移転で来客も増えた陸前高田市のカネマン・ノイエス米崎SS


昨年7月に原発から20キロ圏内の浪江町で営業再開した叶屋・浪江SS
 

  【②エネルギー政策のいま】石油“最後の砦”中核SSを全国配備

 大震災は東日本各地に未曾有の被害をもたらし、電気やガスなどの系統エネルギーがマヒする中で、石油は分散型エネルギーとして一早く復旧を遂げ、被災地の復旧・復興に大きく貢献した。震災を契機に石油はエネルギー供給の“最後の砦”としての重要性が再認識されたことを受けて、国は海外からの資源・エネルギー途絶に加え、国内災害を見据えた安定供給体制を再構築するため、石油備蓄法を改正。地域における情報収集拠点として47都道府県の石油組合を明確に位置付けたほか、地下タンクの増強や自家発電設備の設置などで災害対応能力を強化した中核SSの全国整備を図り、今後の大規模災害に備えたSSサプライチェーンの強化・拡充に取り組んでいる。
 大震災を教訓に、災害時の石油製品の安定供給体制を強化するため、国は①石油備蓄法②石油需給適正化法③独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(JOGMEC法)の3法を改正。災害時における被災地などでの石油製品の供給不足に対処するため、地震など大規模災害の発生を見据えた平時からの製油所・油槽所・SSに至るまでの石油供給体制の整備や、資源・エネルギーの海外からの供給確保に向けた資源開発に係る支援機能の拡充や集約化などを行った。
 具体的には、災害時における国内の被災地域などへの石油製品供給不足が発生した場合にも、国家備蓄石油を放出できるようにするとともに、石油製品での備蓄を増強。ガソリン、灯・軽油、A重油を元売各社の流通在庫に組み込むことで、それぞれ4日間程度の製品備蓄を強化している。また、元売に対して、災害時に迅速かつ的確に石油製品需要に対応できる仕組みを備えた石油供給に関する共同計画を、全国10地域ごとに予め元売間で作成することを義務付け、経済産業大臣が同計画に係る措置の実施を勧告できるようにした。
 一方、改正石油備蓄法において、自家発電設備の設置や地下タンクの大型化などにより災害対応能力を強化したSSなど、地域における中核的な給油拠点となる『災害対応中核給油所(中核SS)』の経産大臣への届出を義務付けるとともに、石油販売業者が組織する団体として、47都道府県石商(名称・住所)を告示。地域における情報収集拠点としての石油組合を明確に位置付け、迅速かつ円滑な災害・応急対策がとれるよう、SS・石油組合・国という一連の情報収集・連絡体制を構築した。
 国は地下タンクの増強や自家発電機、通信設備の設置などに対する補助制度を新たに措置するとともに、昨年末から各地の警察署や消防署などの近隣に位置することなどを原則に、中核SSの全国整備に向けて、2011年末から青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県で先行的に拠点配備をスタート。その後、地震の被害予想が大きい県から順次整備を進めていった。また、中核SSが市町村内の中心に位置し、石油製品供給の中核的な役割を果たすのに対し、必要に応じて、病院や避難所などに燃料を供給する小口燃料配送拠点の整備も行った。
 この結果、昨年末までに中核SS数を全国で約1700ヵ所、小口燃料配送拠点も約500ヵ所の選定を完了した。
 さらに、震災からの復旧・復興に欠かせない石油製品の優先給油をより確実なものにするため、25年度補正予算で、中核SSなどに対して一定量の在庫を備蓄するための燃料購入費用と在庫の管理費用について、国と県が連携して実施していくこととしている。

  
東京では中核SSなども加わり、昨年11月に防災訓練を実施

 

  【③組合と自治体等との協定】新たに170件超、相互依存型主流に

 大震災発生からの3年間で、一気に増えたのが石油組合と地方自治体などとの間で結ばれる災害時燃料供給協定。都道府県や市町村、さらには国の出先機関などが、全国の都道府県石商やその地域組織の支部などに「供給協定を締結してほしい」と申し出た。震災以降、わかっているだけでも170件以上もの新たな協定が締結された模様だ。2011年3月以前は全国で約200件が締結されていたから8割増である。協定は災害時の緊急車両への円滑供給はもとより、災害時における燃料の重要さが風化することを防ぐ効果もある。一方で、自治体と石油組合および組合員SSとの新たな関係強化にも発展している地区もある。
 震災直後、テレビや新聞では連日、SSで給油待ちをしている車列や灯油缶を持った人の列が映し出された。また、警察や消防の緊急車両の燃料確保さえも困難を極めたとの事例も紹介された。その後、全国の自治体は大規模震災に備え燃料調達のための対策を講じることが大きな課題となり、地元の石油組合や支部に災害時協定を求めたことから、各地で次々と協定が締結された。
 一方で、今回の大震災の体験から、旧来の災害時協定とは異なる内容の協定が結ばれるようにもなった。きっかけは大震災時とその後の官公需契約のあり方にある。被災地や関東地区では、多くの石油組合が地方自治体や警察や消防、病院などの公共団体の必死の要望を受けて燃料供給に尽力した。
 ところがガソリンや軽油・灯油の供給が安定化すると、警察署などの官公需契約がたちまち競争入札に戻ってしまい、災害時には店を閉め、連絡も取れなくなっていたような大手の納入業者が、4月以降の入札で、再び安値落札するケースがいたるところでみられたのだ。
 これに対して石油組合やSS側は「苦しい時だけ緊急車両や公共施設への供給責任を負わされ、平時は付き合いもしてくれないような協定はごめんだ」と、締結要請があっても拒否する組合も出た。
 そうした中、「競争入札でマージンがない契約が続けば地元の中小SSは潰れてしまう。いざという時に地元で供給する業者がいなくなってしまう」などとして、協定書の中に、平時の官公需注において地元中小事業者に配慮するような文言を入れるよう求め、自治体もそれを受け入れるケースが出始めた。
 その結果、災害時協定の中に、平時の官公需配慮だけでなく、官公需適格組合からの購入を明記する条文。さらには協定を結んだ組合の組合員名簿を定期的に提出し、給油等はそこを優先するという協定や、組合員でなければ入札に参加できないようなケースも出てきた。
 平時の地元配慮は12年度に北石連が道と結んだものが先駆けとなったもので、これをモデルに道内の自治体で次々に結ばれた。全国の新規協定の3分の1が北海道内の個別協定である。こうした協定は青森や山形、長野などでも採り入れるようになっており、さらに広がる見込みだ。
 このほか、国の25年度補正予算に盛り込まれた「災害時SS地下タンク製品備蓄促進事業」のモデルともなった東京の災害時協定。都内の中核SSの地下タンクに、都が費用を負担し備蓄燃料を保管してもらうというもので、この協定を機に大規模防災訓練に参加するなど都と組合との連携がさらに深化している。
 このように大震災をきっかけに燃料供給協定が数多く結ばれたが、旧来のSS側に供給責任を負わせる協定から、供給する側の事情にも配慮した相互型協定に移行しているのが実情だ。

 
燃料を求めてSSには長蛇の列。緊急車両の燃料調達も困難を極めた


相互型のモデルとなった北石連と北海道の災害時協定締結式(11年12月)